私事で恐縮ですが、今年の6月から産休と育児休暇を取ることになり、約1年間会社を長期でお休みすることになりました。

考えてみると、某自動車会社のお客様相談センターに配属となり10数年、こんなに長く仕事から遠ざかることはありませんでした。長期の休みを前に、日々の応対業務の中で、ふと「来月からはしばらく電話を取ることもなくなるのか・・・」と思うと、今受けている1本1本の電話がとても愛しく思えてなりません。

この機会に、お客様相談センターでの日々を”応対”に焦点をあてて振り返ってみることにしました。

私のお客様センターでの日々は、大きく4期に分かれます。
1)「混沌期」、2)「迷走期」、3)「模索期」、4)「自己発見期」です。

まず、「混沌期」。
これは配属1年目です。上司や同僚から「わからないことがあったら聞いてね」と言われても、何がわからないのかわからない状態でした。最初に取った電話は、今でもはっきりと覚えています。会社名を名乗った後、頭が真っ白になり、記憶がなくなっていました。
”こんな私が電話に出ていいのだろうか”と不安でいっぱいでした。

次に「迷走期」です。
ずいぶんと仕事に慣れてからは、自分なりに目標を立てて業績評価をしなければならなくなりました。私は、効率を重視する目標を立て、いかに迅速に対応するか、そのために整備すべき資料は何か等々に注力しました。そんなある日、同僚が応対中にお客様と談笑していることに気が付きました。私は今までそんな風にお客様とお話をしたことはなかったので、とても衝撃を受けました。その時、私は初めて”お客様は効率だけに満足するわけではない”、”効率を追うあまり心にゆとりがなくなっている”ということに気が付きました。それからは、「お客様が満足するとは何か?」「私はどうすればお客様に満足いただける応対ができるのか?」「自分の得意なパターンだけでの応対ではいけない」と考える日々が始まりました。

それから「迷走期」の中盤と平行して「模索期」が始まりました。
お客様の満足を探るため、NACS(消費生活アドバイザー・コンサルタント協会)のCS(顧客満足)研究会に参加しました。CSに関連する本を読んでメンバーと意見交換をしたり、CSに関するアンケートを取って分析したり、企業や施設等を見学してCSの視点で議論したりとCSを様々な角度から捉えようとしました。そして日常生活でも、CSという切り口で一人の消費者としてサービスや商品を分析するようになりました。その結果、「CSへのお客様の要求は日々向上している」、「お客様の状況や商品・サービスの内容等により、CSの尺度は変化する」等が分かりました。そして、お客様の期待値は状況等により異なり、提供されたものがその期待値以上となる時、CSにつながるということもわかりました。それらを日常の応対業務にどのように落とし込めばいいのか、組織として取り組むためにはどうすればいいのか、現在も模索は続いていますし、時代に合わせて対応していくには模索を続けねばとも思っています。

その次に「自己発見期」に入りました。
お客様を知る前にまず応対者としての自分と向き合い、自分の内面の棚卸を通じて、応対を考えてければいけないと考えました。それは、自分の内面にあまりにも無頓着だったために、ある時期イライラが募り、自分をコントロールできないことで、周りにも自分にも悪い影響が出始めたことがきっかけでした。
その原因を探るため、心や怒りに関連する本を読んだり、カウンセリングスクールに通って様々な技法を学んだりしました。その過程で「エニアグラム」という性格心理学に出会い、自分の価値観やとらわれを知り、行動の根底にある心のメカニズムが少しずつ分かり始めました。

これからは、各期の積み残した課題とともに、自分の陥りやすい考え方や応対の癖を理解してコントロールし、応対のための切り口をたくさん持てるようになりたいと思います。そして、お客様の気持ちに沿って、お客様の性格や状況等に合わせた応対をすることで、お客様の満足が得られればと考えています。

主に電話でのお客様応対は、私を内面的に成長させてくれたと思います。しばらくの間、電話でお客様のお声が聞けないと思うと寂しいです。しかし休職中も、自分と向き合う今までとは違った様々な機会があると思いますので、復帰後の応対に深みと幅が出せるように心がけて過ごしていきたいと思います。
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    お客様相談センターでの日々を振り返って 
 高根沢 文子 14期消費生活アドバイザー
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