私はある通信会社の法人向け顧客対応窓口に勤務しています。いろいろなお客様のご相談にのりつつ、ご利用に適したサービスを御案内したり、ご質問に回答したりしています。 前職は経理の仕事をしていましたが、あまり性に合わなかったようで、この仕事についてから、やっぱり適職はあるのだなと妙な納得をしています。お客様の言いたいことを引き出して差し上げて、私がだした回答にお客様が納得されて、ありがとうと言われた時には、お役にたてた喜びを感じ、ほんとにこの仕事をやっていてよかったと実感します。そのときの充実感は言葉では言い表せません。この世界のことを全く知らない状態で飛びこんだ私が、どうしてここまでこの仕事が好きなったのかを少し皆さんにお話したいと思います。 3年ほど前、私がこの会社に入社したときの仕事は、一般の個人利用顧客にお電話をさしあげてサービスにお入りいただくという仕事でした。そのころは全く余裕もなく、毎日電話をかける件数の目標値であるとか、サービスに入っていただいた顧客の件数をあげるためにどうすればよいのかとか、自分に課せられた仕事をこなすことに必死でした。 はっきりいって、CSなどといえるようなものではなく、顧客対応にふさわしい言葉使いを学んだり、営業の人のようにトークを工夫したりするそんな毎日が続きました。後から考えれば基本的な応対の基礎を学んだ時期で非常に重要な時期だったと思いますが、そのうちにお客様にお話をきいていただくにはどうしたらよいのかとか、お客様に気持ち良く快諾いただくためにどうしたらよいのかなど、お電話を受けるお客様の立場や気持ちを考えるようになりました。相手の気持ちにたったトークをするようになると、説明もわかりやすくなり、サービスにお入りいただけるお客様も増えていきました。そして仕事も楽しくなり、途中で法人向けサービスの部署にかわりましたが、もっとお客様のためになることを心がけようと思うようになりました。 しかしながら、やっぱりどんな仕事でも大変なこともありますし、どんな人間も同じ気持ちを保ち続けることは難しく、私もやがてスランプを迎えました。部署の上司が、相談にのってくれ、トークを変更したり、私のトークを聞いて分析をしてくださったり、いろいろ手を尽くしてくださったのですが、思ったようにサービスに入っていただけず、悩む日々を過ごしていました。 そんな時です。私は一本の電話で救われました。そのときの感動が今の私を動かし、この仕事を続けているといっても過言ではありません。 このお客様はすべて解約し、競合他社に利用を移されていました。 「おたくの会社の営業担当もくるくる替わるし、電話でいろんな会社から勧誘があってもう嫌になってしまい、前使っていた会社にもどしたんだよ。」という男性担当者の回答。そこでひきさがらずに「そういうお客様のために私たちの窓口を立ち上げました。是非私にお電話をいただけないでしょうか?ご不安な点をきちんと説明させていただきます。」というような説明を何分かさせていただいたところ、 「あなたが説明してくださるとほんとにそうだと思えるよね。プロだよね。こっちも安心できるし、もう少しあなたに早く出会っていたら、利用をやめなかったよ。残念だね。とりあえず、窓口の電話番号とあなたの名前をいれて、おたくの現状のサービス案内を送っておいてくれる?今は変更したばかりだから無理だけどね」 「ありがとうございます。お待ちしております」電話を切って私はトイレに走りました。 この仕事に出会って、誠意をもった言葉はお客様に必ず伝わるという、どんな仕事にも通じる重要なことを学びました。そして私がまもなくそのスランプから脱したのはいうまでもありません。お客様の言葉に救われて私の今があるのです。 このとき以来、お客様に感謝すること、お客様から学ぶ姿勢を忘れないよう心がけています。
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column 011 顧客対応との出会い 〜お客様の一言に救われて〜 島村 美奈子 |
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