私はパソコンメーカーのコールセンターで5年ほどお客様対応を行っており、後半の2年間はほとんどクレーム対応のみを行ってきました。

 2年間も毎日クレームを行ってきていれば、お客様からいただくクレームの内容もある程度パターン化し、それに対して自分なりの「言い回し」を考えて準備しておくことも可能です。

 準備した「言い回し」の内容も実戦で使用して試し、試行錯誤と改良を重ねてお客様を納得させ、高確率でクレームを収める事ができる「黄金の言い回し」をパターンごとに完成させていきます。

 大抵のお客様はその「言い回し」で反応の大小はあっても最後は理解していただけます。自分が作った「言い回し」は長い話の中で説得していくものなので、「こうきたらこう」と、1つの「言い回し」だけでも数多くのパターンが存在するものもあります。

 私はその「言い回し」で数多くのクレームを沈静化させてきましたので、自信を持って使用するわけですが、一部のお客様にはまったく合わないことがたまにあります。いつも通りに「言い回し」を使用するのですが、なぜか空振りするのです。「おかしいな」と感じますが、「まあこのお客は何を言っても駄目なんだろう」とか「久しぶりに使った言い回しだからちょっと言い方がギクシャクしていたのかも」と言い訳をつけて、うまくいかなかった時は目を瞑ってました。

 そんな対応を続けているうちに、本社のお客様相談室へお誘いがあり、是非にと立候補してきたわけですが、お客様相談室の中でもその「言い回し」は活用させていただいてます。

 しかしコールセンターと違い、お客様相談室は対応範囲が広く、柔軟対応の幅も桁違いに広いことに気付きました。出来ることが多くなると「ここまではできるけど、これ以上はできません」と決めて作った自分の「言い回し」ではさすがに苦しくなります。 その場合も「言い回し」を応用して範囲を広げて話せばなんとかなりますが、「言い回し」がまったく通じないお客様がコールセンターにいる頃より目に見えて増えてきている事を感じました。

 そんな中、弊社の部長であるNさんにカスタマー研究会を紹介いただき、まずはカスタマー研のホームページを拝見させていただきました。 「成果発表」の『顧客タイプ別対応方法の研究 〜エニアグラム(9つの性格)の視点から〜』 を読んで目から鱗が落ちました。

 「そうか、お客様にもいろいろな性格の人がいるのだから、1種類の言い回しで納得しない人がいるのは当たり前だ。性格に種類があることを考えれば、1つの言い回しだけ最低でも9種類は必要になるわけだ。」

 と、そんなにお怒りではないのに妙に納得しないというか、ウマが合わないお客様が出てくるのも当然だと感じました。 当たり前のことと思われるかもしれませんが、当時の私はこの論文を拝見するまでまったく気付きませんでした。

 エニアグラムの本は読んでいましたが、「自分個人の性格がどれか」ぐらいにしか頭になく、それを顧客対応に結び付けてくれたのがこの論文でした。この論文のおかげで私のクレーム対応に対する1つの疑問が解決しました。この論文とカスタマー研、そしてカスタマー研究会を紹介していただいたNさんに感謝しています。

 頭の中の霧が晴れて、スッキリした気持ちで今日もクレーム対応を行っています。



column 045
クレーム対応時の言い回しについて
小泉 純一
Home ColumnTop